くらびぼー

修理屋家業の傍ら書き溜めた、クラッシクカメラの備忘録

Conntessa35@001

ツイッターでの整備実況をきちんと保存できる形にまとめ、HPのコンテンツにすべきだとの助言を受け、これから、ブログにまとめてゆこうと思う。第一弾は、Conntessa35。

ドレーカイル式の距離計を組み込んだ120フィルムを使うツァイス・イコンのカメラは戦前から作られていて、”スーパー・イコンタ”と呼ばれていた。と同時に、距離計の無いセカンドラインを”イコンタ”という。その並びでいうと、1950年に発売になったこのカメラは、”スーパー・イコンタ35”と呼ばれるべきカメラなのだけれど、貴婦人を意味する”コンテッサ”を冠した理由を考えるのも、面白いと思う。だって、露出計の載らない同じタイプのラインは”イコンタ35”なのだから。

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この記事はこれから、私自身の備忘録の意味も込めようと思う。先日先輩とも話していたけれど、どんな修理も最近は結構忘れる。このカメラに手を入れる前に、必ず確認しなければいけないのは、距離計の動きとレンズボードのガタつき。この二点に問題があるならば、整備に大変手間がかかるので、絶対に仕入れない。特にレンズボードのガタは、気づかずに修理進行すると、あとで本当に泣くはめになる。修理依頼の場合も、そのような機体は、修理費用が販売相場よりも上がる可能性があるので注意。

それでは、おもむろに作業にかかる。
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上部カバーは比較的簡単に開く。中に入っているのは、電流計とガラスプリズム。そもそも、”ドレーカイル式距離計”とは、二枚のプリズムを逆回転させることで、測距像を移動させ距離を測る装置。この方式の利点は、機械的に相当なダメ-ジを受けない限り距離計が狂うことが無いこと。もう一つは接眼側とレンズボードとは光路が繋がっているだけで機械的に何の連動も必要ない。それ故、蛇腹でレンズを繰り出すカメラにとってはとても都合のいい方式なんだ。その代り、調整はかなり面倒だし、ブライトフレームを組み込むことも難しい。

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前後のベースボードに挟まれて、合計6個の歯車が二個のプリズムを回す。ほぼ中央にあるギアは二重になった間にスプリングが入り、バックテンションをかけてガタを殺す。それにしても、こんな複雑な装置をよく思いついたものだと、つくづく感心する。ついでに言うと、冒頭挙げた”スーパー・イコンタ”シリーズのこの機構には、プリズムを少しづつずらして組み込める調整機能がついているが、コンテッサにはない。理由はいろいろ考えられるが、120フィルムカメラよりも普及機の扱いを受けていたのではないかと推察する。

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シンクロコンパー。およそあらゆる機会に組み込まれているといっても過言ではないが、1/500secを出すために、増しバネをかけなければならず、セット位置を等間隔にはできなかった。4年後の1954年に発売となるRetinaⅢcには改良型が搭載されているので、このタイプを載せる最後の世代といっていい機械。ケース外周には青海波ともいえる波目模様が刻まれクラシカルな雰囲気。何度ばらしてもほれぼれする機械。

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通常はシャッターを整備してボディーに組み込み、距離計がぴったり決まれば、それでもう上がりなのだが、このカメラの偏屈な機構は、巻き上げにも及んでいて、確認し落とすと店頭接客説明中に恥を書くことになる(実話)。フィルム装填してカウンターをスタート位置であるダイヤマークに合わせると1コマ目までフリーで巻き上がりそこで止まる。不調な場合は1の前でロックしたり、逆に止まらないで巻き上げ続けてしまう。巻き上げ機構が正しく動いていないからで、アンダーカバーを外して調整してやらなければいけない。カバーそのものは、ビス4本で留まっているだけだけれど、書き上げノブは逆ネジで、尚且つ中心部にリバーススイッチになるボタンがねじ込んでありこれには全くの手がかりが無い。稀に、無理無理かに目穴をあけた機体も見かけるけれど、私はたまたま骨董市で見つけた歯科用ペンチを使う。虫歯を抜くための器具だ。こんなことがあるので、我が家には怪しげな道具がぞろぞろたまってゆく。

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中身。本当に輪列の好きな会社だと思う。基本的にベンジンで洗浄し注油することで、ほとんどのトラブルは解消してしまう。決して最初に注油してはいけない。経年劣化して粘性の上がった潤滑油が動きを妨げているので、ここに安易に注油すれば改善するどころか症状を悪化させる。理屈の解らない人はそこでさらに油を入れて、溢れた油が入ってはいけないところに回り・・・・・。まあそんなことも、痛い目にあって反省して身につくんだけどね。生活のかかっていない趣味の修理教室なんかは、その辺の学習効果が低く、結構怪しげなことが行われ、かわいそうな機体をときどき見かける。

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完成。”貴婦人”というにはちょっとふくよか過ぎるかもしれないが、気品を感じさせるカメラだとは思う。パッケージングに隠れてなかなか特筆されないけれど、実はこのカメラの魅力はテッサーの写りだったりする。44mmという変わった画角とf2.8の開放値は、数あるテッサーの中でも評価が高い。クラシックカメラ好きならば、一台は手元に置きたいカメラだ。



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  1. 2016/04/20(水) 11:16:23|
  2. レンズシャッター距離計付き
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