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くらびぼー

修理屋家業の傍ら書き溜めた、クラッシクカメラの備忘録

夫のちんぽが入らない

夫のちんぽが入らない
こだま著 扶桑社刊2017/7/16初1200円


 2か月も休んでいて、再開直後のタイトルがこれかよ、と、訝られる向きもあるだろうが、はっきり言おう、身も蓋もなくあけすけな書名で無ければ、この著作は多くのメディアで取り上げられ、本屋大賞の少なくとも候補にぐらいはなったと思う。何しろ、朝日新聞に載った広告には、”書名は書店でお確かめください”と扱われたのだから。放送禁止用語故電波に乗せた紹介もできない。だから、昨年発刊なのにブックオフの200円均一棚に並んでいた。尤も、このタイトルで無ければ私も手に取らなかっただろうけどね。
かてて加えて、あまりにも赤裸々な著者の私生活が吐露されていて、絶対に身元を明かせない。いや、本人だけなら何とかなっても、ご主人は立派な学校の先生をなさっている。奥さんが許容していても、今の世の中世間が騒ぎ立てるに決まっている。それでも、この作品を発表された勇気を称え、本書を読むことができた幸福をお伝えしたい。
タイトルにある問題を起点とし、田舎から都会に出て教員になり、それに挫折し、狂い、夫とともに文字通り血まみれになりながら生きている一人の女性の半生が語られている。
嘗て、”東電OL殺人事件”という大変な労作があった。渋谷の住宅街で東京電力社員の女性が何故殺されたのかを、徹底した踏査で解き明かそうとした著作だったのだけれど、エリートOLが何故街角で客引きしてSexに及んでいたのか、全編を読み通しても腑に落ちなかったし、そもそも本当に立ちん坊していたのかとすら思っていた。しかし、この本ではそんな心持に陥る経緯が、ほんの数ページで語られ、素直に納得できる。やはり、人の心の闇は本人が自分の言葉で語らなければ、決して他人には伝わらないものなのだ。いや、これほどの辛酸を心の奥から引きずり出し、言葉に並べて人前に晒すのは、なまじの人では出来まい。天賦の才のたまものだと思う。
励みたかった職業もわずかな期間であきらめなければならず、病を得て体を引きずり、望んでも子供を作れず、不幸を捏ねて人形にしたような人生なのだけれど、彼女の中に”羨ましい”と思える点が見えてしまう。それは、この夫婦がお互いの美徳をしっかり認め、尊重し、労わり合っていること。夫の働きの正しさ、それを助ける誇りが、行間から滲み出、本当に美しいと思え、涙を誘う。
私は、幸福とは己の幸運を自覚することだと、常々思っている。吹雪の頂上直下でビバークを続けるような暮らしであっても、ポケットに残ったチョコレートを見つけて、分かち合って喜ぶことを続けていけば、いつか晴れ間を見つけ下山できる。生き延びたうえで、無謀なプランだったとなじる周囲に、きちんと自分の言葉で経緯を表現しなければ、愚か者の烙印を押されたまま葬られてしまう。兎に角、生きることは正しいことなのだ。
必ずやこの作家は、この先実名で再デビューする。その時受け取る名声こそが、彼女の人生のご褒美だ。そしてそうなることが、多くの無辜の苦しみにさいなまれる人々に勇気を与えると思う。ともあれ、多くの人が知り、読んでほしいと思える一冊です。
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